音楽を聴きながら読みたくなる小説「マチネの終わりに」
Kindle Unlimitedが日本で始まってから、1カ月ちょっとが経ちましたね。
始めの1カ月は無料だから、とりあえず始めてみるかと思った人。
そして、そのまま契約してしまった人もいるはず。
僕もそのうちの一人。
だって、読んでる途中の本がいくつかあるのに、それを取り上げられちゃうって味気なくないですか?笑
まあAmazonも、顧客のこういう心理は織り込み済みなんでしょうね。
使い勝手としては、10冊までしか一度に保管できない。
読みたい本が少ないのと、検索機能が微妙かな。
だけど読み放題なので文句は言えないし、本の種類はこれから改善していくでしょう。
面白そうな小説でもないかなー?って評価の高い小説を検索するとこうなる。
官能小説が上位にくるの、どうにかして欲しい。笑
まあ官能”小説”なので、しょうがないんですけどね。
検索でExcept機能があったらいいのに。
Amazonさん見てますかー?
今回紹介しようと思った「マチネの終わりに」は、読み放題の小説のなかでもなかなか評価が高かった。
以前紹介した、「私とは何か」の作者である平野啓一郎さんが執筆したもの。
主役は40代の男女で、一言でいえば「大人の恋愛小説」
ちなみに、マチネの意味は午後の演奏会。
男性主人公がギタリストであることと強く関係してます。
ギタリストと言っても、ロックじゃなくてクラシック。
まず特徴的なのが、文量の多さ。
又吉さんの「火花」と比べると、約3倍ほどのページ数でした。
それだけに読み応えのある本だったし、どうすれば魅力が伝わるのか。
シンプルに印象に残った言葉を挙げていこう。
過去は変えられる。
人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それぐらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?
今、この瞬間に出会えた言葉だからこそ、自分の琴線に触れたセリフ。
抽象的に書けば、あることを知ることによって、もうそのことを知らなかったままの状態で見ることはできない。
具体例を挙げてみましょう。
例えば自転車に乗れるようになると、乗れなかった世界はもう、当時と同じ世界には見えなくなるとか。
異性のことを一度知ると、世界がもう別のように見えるとか。
ああ、懐かしい。。笑
今の自分に置き換えてみると、
研究を止めて日本に帰ると決めたことは、自分の心に影を落としている。
それは揺るぎない事実。
けれども、その決断を肯定できる瞬間が来ることを願いたい。
「未来だけじゃなく、過去も変えられる」
これからの自分次第で。
小説での楽しみな出会い。
―彼は、神様が戯れに折って投げた紙ひこうきみたいな才能ね。空のたかいところに、ある時、突然現れて、そのまますーっと、まっすぐに飛び続けて、いつまでも落ちてこない。・・・その軌跡自体が美しい。
小説を愛して止まない理由の1つが、美しいと感じるフレーズに出会えるから。
もちろん、物語自体も楽しむんだけれども、こういうセリフに出会えると、ちょっと得した気分。
この思いがけない偶然の出会い、みたいなのがたまらない。
彼っていうのは、主人公の一人である男性のこと。
天才ギタリストと称された彼のことを、もう一人の主人公である女性が説明したところ。
彼女が彼のことをどう思ってるのかが間接的に、けれども強く伝わってくる表現だと思う。
「天は二物を与える」とか言ったりしますけど、言い方を少し変えてみるだけで、こうも印象が変わるのかと。
こんなこと言われたら、グッときますね。
まあ男性の作者が、この女性のセリフを考えてるわけですけどね笑
恋愛小説って、高校生とか大学生が主役になることが多い気がする。
そういうのも嫌いじゃないけど、ちょっと胸焼け気味になるかな笑
40代の恋愛ってどういう感じか分からないけど、燃え上がるような気持ちと、それを抑えられる成熟した理性。
正直、キレイごとのように感じる部分もありましたが。。
15,6年後に恋愛したら、納得するんだろうか?
分からないけど、40までには結婚してることを祈る。笑
さて、いつまで笑っていられることやら。
芸術に関する議論がたくさん出てくる。
「マチネの終わりに」は、男性主人公がクラシックギタリスト、女性主人公のお父さんが映画監督、という設定。
そのせいか音楽や映画の話がたくさん出てくるけど、その批評部分は正直ピンとこない。
芸術に対して造詣ないですからね。
美術館に行くのは好きだけど、うわあ!とか、おおぉ!!とか言ってるうちに終わってる笑
そのせいか、ちょっと退屈になることも正直ありました。
そんなときは、実際にYoutubeで曲を聞きながら読んでみるのがオススメ。
いくつかのセリフを自分の文脈に落とし込めると、新しい視点をもたらしてくれた。
読み放題を試してみなかったら出会えなかったと思うと、出会えて良かったと思える小説かな。