有機合成で嫌な3つのワードを交えて、研究の話をしてみる。
研究室配属前の理系大学生は、配属先選びで迷っているかもしれない。
有機系のラボって忙しいって聞くけど、実際どうなんだ?とか。
ちょっとでもイメージが膨らめばいいなと思って、書いてみます。
省いたつもりが、少し長くなってしまったけど。。
まあ忙しい方だとは思う。
インターンで企業に行った時に、他の大学の有機系の人たちと話す機会があったけど。
どこの大学でも有機系の人は結構忙しいんじゃないかな。
有機合成において、恐怖の3つのワード。
- ロスる。
- 壊れる。
- いかない。
ここら辺を交えて、ラボでの合成の話ができればいいなと思う。
例えば、Aという物質から、Bという物質を作りたいとする。
それを引き起こす反応を考える際に、論文を読んで条件を探していく。
この時に気にすることがいくつかある。
- Bがどれだけ効率よくできるか。(収率が高いか?)
- あとの処理が楽か。(精製が簡単か?)
- 反応させる時間の長短や、試薬(反応に必要な物質)のコスト。
細かく挙げるときりがないのでこの3つで。
まず1つ目の収率に関して。
AからBを作るにしても、Bが100%できる反応はほぼない。
別の物質(副生成物)が出来たり、Aが反応しないまま残ったり。
当たり前ですが、効率よく反応させたいですよね。
いろいろ検討して反応を仕掛けても、ちょっとしか反応が進まないことがある。
これが恐怖のワードの1つ「いかない」ってやつ。
まあ「いかない」だけならまだ良いと思う。
時間はかかるけどAを回収できるから。
でも反応の条件によってはそうはいかない。
あんまり反応がいかなくて、Bがちょっとしか得られなかった。
そこでAを回収しようと思ったら、「壊れて」しまったり。
Aは最初の物質だから、また買うなりしてやればいいじゃない?と思う人。
そういうこともあるけど、ほとんどないと言い切れます。
その理由は、最初の方の反応ってだいたい既知(誰かがやったことがある)だから。
そこまで変なことは起きないはず。
もし起きたら、何か見落としがあるか、余程腕が悪いってことに。。
ちょっとこの話は後に続きます。
2つ目の後処理に関して。
有機合成って1つの反応で終わるわけじゃない。
AからBを作ったら、そこからCを作って、Dを作って・・・という作業の繰り返し。
この作業の繰り返しで、目的の物質を作るわけですね。
条件によっては特殊な金属を使ったり、酸性とか塩基性を気にしたり。
副生成物があると邪魔になので、反応を起こすたびに取り除いたり(精製作業)。
金属は基本的に処理がめんどくさいし、精製は短くて1時間とか取られる。
だけど、反応させる経路によってはめんどくさい作業を避けられる。
どうせなら、より単純な方法を取りたいですよね。
ではさっきの続き。
恐怖のワード「壊れる」だけど、気付いてくれたでしょうか?
本当の恐怖は、自分で作った途中のモノが壊れること。
その1つ前のモノが残っていればいいけれども。。
もし手元になければまたその1つ前、その前、、
というように繰り返し前に戻って、作り直さないといけない。
これが壊れることによる一番大きな恐怖、「ロスる」ってやつですね。
ちなみに精製作業でも「ロスる」ことはある。
この場合は壊れたのではなく、文字通りどっかに行ったということ。
これは基本的には腕のせいなのと、説明が長くなるのでカットm(__)m
詳しく知りたい人は、カラム、ロス、とかで調べてみてくださいな。
最初の方から作り直すのは、かなり時間が取られるので出来れば避けたい。
けど有機合成において、ロスって作り直すのは避けて通れない道かな、と思う。
3つ目のコストに関して。
企業だと1~3全てを厳密に気にしているのですが。。
試薬って当然、安いものと高いものがあります。
大学の研究室等だと、新しいものを作ることを目的にしている。
だから試薬の値段等は気にしない所もあったり。
とにかく誰よりも早く作れれば良いので。
昔、とある議員の方が言ってましたが、
一番じゃないと意味がありません。
研究室に入ってから、いくら使ったのかはあまり考えたくない。。笑
ですが、より早く、安いコストでできるに越したことはないですね。
合成について、さらに詳しく知りたい学部生とかは、「逆合成解析」や「Scifinder」を調べてみてください。
というか、逆合成解析は一応講義とかで聞いたことがあるはず。
Scifinderは登録しないと使えないけど、合成において非常に重宝するツール。
合成してる人で使ったことがない、ということはないんじゃないのかな。
めちゃくちゃ完結にまとめると
1、逆合成解析やScifinderを用いて、目的物質の作り方を考えたり調べる。
2、論文を読んだりして、反応させる経路を考える。
3、実際にやってみる。
基本的にこれの繰り返しかな。
うまくいけばどんどん先へ進めるけど、創薬ですからね。
途中まで誰かがやったことがある反応なら、確実に再現できないといけない。
でもいつかは、論文に載っていない物質を作る瞬間がやってくる。
世の中で誰も作ったことがない物を、自分の手で作りたい。
有機化学が好き。
薬を作って病気を治したい。
ここら辺に少しでも興味があれば、配属先として選んでみてはいかがでしょう。
僕は学部時代のテストで有機化学の単位を落としかけた。
そのときに、君は有機系のラボは止めた方がいいんじゃないか?と言われたり笑
入ってから勉強し直せば、実際どうにかなる。
苦手でも気持ちが大事だと思ってたので。
なので、やってみたいと思ってる学部生がいたらぜひ。
何かしら参考になれば幸いです。