有機合成をしてる身として、興味がある人はぜひ読んでほしい小説「ジェノサイド」
どうもこんにちは。すがです。
創薬とか興味あるけど、研究室ではどういうことをやっているんだろう?と思う人。めちゃくちゃお勧めの小説があります。
それがこれ。
- 作者: 高野和明
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/03/30
- メディア: 単行本
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文庫だと上下2冊。
ストーリーはかなり超展開で印象的だったけど、そこはまあ置いときます。
多少は有機合成をやってる観点から、この小説がいいなと思う理由を2つほど挙げていきますよー
以下、ネタばれを含むので、気にしない人だけどうぞ。
研究シーンのリアルさ。
この物語は3人称で展開されてます。
そのうちの一人である古賀研人は、薬学部に所属する修士2年。
もうね、これだけで親近感が湧くね。笑
実際に描かれているシーンの一部。
研人は合成した化合物を、カラムクロマトグラフィーという手法で精製した。
細長いガラス管の中で、混合物だった試料がクロロホルムによって溶かされ、分離し、きれいな層を形作っている。
0.2パーセントのメタノールを足したのが正解だった。
有機合成っていうと、フラスコの中で何かモノを溶かしたり、反応させたりっていうイメージだと思う。フリー素材でそれっぽい画像がなかなか無い。。
僕の学科では、2,3年次に授業として合成の実験はする。
けど、精製の作業って時間が掛かるからやらないんですよね。
めちゃくちゃ重要な作業で、研究室ではしょっちゅうやってる。
多いときは1日に3,4回ぐらい。
なのでイメージしにくいと思うけどあえて引用しました。
最後のメタノールもめっちゃ重要なんですよね。
そこら辺の詳しい話もそのうちしてみたい。
他にも、研究するときにどんなことを気にしているんだろう?
という、思考過程も描かれてます。
研究者の頭の中はどんな感じか気になる人はぜひ。
夢の創薬ソフト「GIFT」の登場
創薬研究を家づくりに例えるとこんな感じですかね。
家=作りたい薬
木材や鉄骨=薬を作るときに必要な試薬
設計図=合成手順
大工さん兼、建築デザイナー=研究者
なんとなく伝わればいいなーと思うのですが、新薬、つまりお客さんが欲しい家、というものに明確な答えはない!!
なので、お客さんからの要求を聞きながら、それをもとにデザインしていくと思います。
ですが、「GIFT」はこの概念を覆します。
お客さんからの要求を入力したら、理想の設計図を教えてくれる!!
個人的にはめちゃくちゃ考えさせられました。
研究者は頭を全然使わず、手を動かすだけで誰でも薬が作れるということになるから。
もちろんこの話はフィクションだし、他にも研究者にとっては眉唾ものの機能がついてて。だから、このソフトを作るのはほぼ不可能だと思ってます。
ほぼ、と書いた理由は一応これでも研究してるので。
もしこのソフトができる頃には、有機合成化学者の仕事が少なくなってるはず。
専門を極めたいなーとは何となく思っていました。
単純にそっちの方がいいと思っていたから。
でも「WORKSHIFT」や「ジェノサイド」を読んでから、その必要性をますます感じます。
それと同時に、自分の専門における優位性が失われたら!?とか。
世の中に絶対はない、ということを改めて考えるきっかけになった。
これがいいなと思った2つ目の理由ですかね。
興味が出た人は読んでみてくださいな。